アーティスト・イン・レジデンス in あおもり
2002年1月26日「アーティストトーク」

〜アーティストトークの様子を報告します〜


 アーティスト・イン・レジデンス展交流プログラムのひとつとして、1月26日、午後2時からアーティストトークが3回にわたって行われました。お天気も良く土曜日の午後とあって、会場にはたくさんの人が訪れて、ここで制作された作品の動機やコンセプトなどについて、作家本人から直接聞くことが出来ました。



 アーティスト自身にとっては、作品について語ることは見てもらって感じとることへの補助的意味もあります。アーティストの言葉を聞いてもう少し深く作品に近づけるかもしれません。創作への考え方やそこで何を伝えたかったかを作家本人の言葉で聞くことで、一層作品や作家への理解が深まるというものです。
 以下、本人の解説や質問に対する言葉をまとめてみました。たくさんお話する方と、そうでない方がいらっしゃるためボリュームに差があるのは悪しからず。


鳴海恒夫(青森市)「シーソー」他

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 杉やヒバを使ってシーソーのような形や椅子・窓などの彫刻を作りました。シーソーは屋外に、椅子などはギャラリーに展示。何故シーソーかということに対しては、彫刻は動かないものと考えるのではなく、動かしてみたかった。動かないものが動くことへの驚きや面白さがあった。
椅子は家具として、窓は彫刻という窓を通して見える外界に興味を示したかった。




佐々木秀明(札幌市)「雫を聴く」

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 天井から落ちる雫に投影された光のインスタレーション。作品について話す前に静かに雫の音を聞いて下さい。そこで自分なりに感じ取っていただけたらそれでいいと思います。 アーティストというのは、声高にエキスプレッションするのが普通なのかもしれないが、自分は見る人に考えて欲しいと思う。
今回は、この建物や土地の持つ力に刺激を受けた。ここは大変主張の強い空間であり、この場所だからこういう作品になった。9年くらいこのシリーズで作っているが、雫によって拡がる光の波紋とこの空間全体をそれぞれに感じていただきたい。



ゾルターン・バラニ(ハンガリー)「御影石による石彫」

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  大きな石の中に小さな石がはめ込まれた石彫。自然について理解しようとしてこういう彫刻になった。初めは水車を創りたかったが、それは無理だったので、水車の力で動く「臼」をイメージして創った。小石は自然の力で削られ小さくなったもの(河石を使用)だが、それが大きな石で守られているというのが今回のアイディアである。この場所は肉体的力が湧いてくる場所であり、今回のレジデンスで1番大きく作品に影響したことだと思う。



リーナ・イーリパ(スウェーデン) 「冷たい肌(Cold Skin)」「柔らかいカバー(Soft Cover)」「リクエスト(Request)」

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 冬の寒さをテーマにした布、布団、毛糸を使ったインスタレーション。どんな作品を創るかはここに来てから考えようと思っていたが、日頃身近にあるものでつい見過ごしてしまうものに着目した。暖かそうな布に来るんだ雪用シャベルは、家々の前にあるものに霜がついた様子を見た時のインスピレーションから。こんな暖かいものであればと思って創った。
 アーケードに釣り下げた白いフトンは、全てのものが雪で守られている感じを表現したもの。
 手編みのソックスには髪の毛が織り込んである。女性の髪を編みこむというのは精神的つながりを意味している。例えば水夫に髪の毛を編みこんだセーターを贈るのは、強い絆で結ばれて必ず無事で帰るようにとの願いが込められている。



イリク・ホルムステッド(スウェーデン)「都市の風景(Urban Landscape)」
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 青森の日常の風景の写真をパノラマ状に展示。青森市内を車でまわり感銘を受けた風景である。高いビルと小さなビルが曲線を描いて雑居している通り、高いビルが直線状に並ぶ通り、雪の中に小さな住宅ばかりが続く通りを15〜16シーンずつ写した。また、この周囲の森の写真はつなげると360度の風景になる。人物ポートレートは、ここを訪れた人々を彫刻のように写してみた。これらの写真は、一連ではあるが1枚1枚がワンシーンであり、ワンシーンの連続である。



パク・ムリン(韓国)「表層への入口」

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 使用済みパッケージや箱、フリーザー、パソコンなどを使い、霜や雪を表現するインスタレーションを制作しました。 市内をあちこち回って青森をイメージするものを探しました。パッケージや箱や冷蔵庫のフリーザーシステムを使って表現した。深い雪の中での体験から受けた青森のイメージは、木・雪・氷・霜など寒い気候のイメージ。また、箱は自分を守る何かを意味する。つまり、箱と青森の気候のイメージを一緒にして、つなげてみることによってできた作品である。
 これを見て、どういう風に感じるかは見る人次第であり、作者はそれらを考える機会を提示できればよいと思う。




PS. この日のように、澄みきった青空の下でみる建物や作品もすてきですが、一度、夕方から夜にかけて行くことをお勧めします。日が沈むころ、オレンジ色をバックにしたシーソー、陽が落ちてからギャラリーの中に浮かび上がる光のインスタレーション、暗いアーケードの中でゆらゆらする白いカバーなど、この時間でなくては見れない美しさでした。

(文:高田 写真:小倉)


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